鶯の囀り

今年も新かどやでは鶯の囀りを耳にすることが多くなってきました。
新型コロナウィルスの流行で不安な毎日を送っておりますが、鶯はいつもと変わることなく、とても綺麗な歌声で私たちを励ましてくれています。感謝!

鳴禽類ソングバードの仲間に入るこの鶯の囀り、方言があるのを知ってらっしゃいますか。
「ホーホケキョ」と言う大まかなフレーズは、ある程度、遺伝子にコントロールされたホルモン分泌によって道づけられていますが、音色や抑揚などの細かな囀り方はその土地の環境や周囲の成鳥の囀り方に大きく影響をされることが分かってきております。この影響を受けた独特な囀り方が、私たち人間で言うところの方言(dialect)に当たるのでしょう。
通常、日本に生息している鶯は季節ごとに繁殖地に移動し、魅力的に上手く囀ることで縄張りを確保します。ところが、一年を通して移動せず縄張り争いの必要の無い環境に置かれた鶯は、より単純な囀り方となるようです。国立科学博物館の浜尾章二研究員は、約80年前に日本からハワイへ持ち込まれた鶯を研究していたところ、ホーホケキョではなく、「ホーホケッ」としか鳴かず、周波数の変化も乏しく、囀りを構成する音階の数も少ないなど、縄張り競争の激しい日本の鶯に比べ、単純な構造だったことを発見しました(産業ニュース、2015/05/10)。ハワイの鶯の囀り方が単純化したのは、一年中移動せずに同じ場所にとどまり、競争が緩やかなハワイで生息していたからだと推測ができます。環境が変われば、囀り方も変わってくるのですね。

囀り方は、上述のように置かれている環境以外にも、周りの成鳥の特徴のある囀り方によって強く影響を受けるようです。成鳥の居ない環境で育てられたヒナは、他のヒナと比べて同じように地鳴りはできるが、上手く囀ることができなかったそうです。成鳥が居なくても同じように地鳴りができるということは、地鳴りは、鶯が生まれ持った遺伝子でコントロールされているからといえます。一方、囀りはどうでしょうか。成鳥が居ないと上手く囀ることができなかったと言うことは、成鳥のように上手く囀るようになるためには、成鳥をお手本にして習得しないと、遺伝子だけでは不可能。言い換えると、鶯には成鳥の独特な音色、抑揚を学習する高度な能力があるということになります(Encyclopedia.com, Birdsong Learnin,May 28, `20 updated)。あんなに小さい身体なのにすごい能力ですよね。子供が周りの大人から一生懸命、言葉を学習する時のように、小鳥は、成鳥の独特な囀り方を注意深く聞き、記憶に収納し、自分で何度も何度も発声練習をしながら身に付けていく。子供たちがその土地のしゃべり方、方言を身に付けていくように、ヒナもその土地の成鳥の独特な囀り方、方言を身に付けていくのでしょう。

親バカですが、新かどやの鶯は、一番綺麗な歌声で、厳しい状況に直面している私たち新かどやスタッフを精一杯、応援してくれているような気がします。普段何気なく耳にする鶯の囀り、何だか愛おしくなってきました。感謝!